名古屋高等裁判所 昭和56年(行コ)5号 判決 1984年9月27日
名古屋市港区油屋町一丁目一九番地
控訴人
水野天明
名古屋市中川区尾頭橋一丁目七―一九
被控訴人(旧被控訴人昭和税務署長訴訟承継人)
中川税務署長
伊藤元夫
東京都千代田区霞ケ関一丁目一番一号
被控訴人
国
右代表者法務大臣
住栄作
右被控訴人両名指定代理人
田井幸男
同
鈴木孝男
被控訴人(旧被控訴人昭和税務署長訴訟承継人)中川税務署長指定代理人
和田真
同
柴田良平
被控訴人国指定代理人
横田友之
同
長屋正由
右当事者間の所得税更正処分取消、慰藉料請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の申立
一 控訴人
1 原判決を取消す。
2 旧被控訴人昭和税務署長が控訴人に対し、昭和四九年一月二一日付でなした昭和四五年分、同四六年分、同四七年分についての各所得税更正処分を取消す。
3 被控訴人国は控訴人に対し、金一三〇万円を支払え。
4 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
主文同旨
第二当事者の主張及び証拠関係
当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり削除、訂正、付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決の削除、訂正、付加
1 原判決五枚目裏一行目の「2」の後に、「(1)」を加え、「竹内」を「竹田」と改め、同九行目の末尾に、「(2)また前記係官及び被控訴人ら訴訟担当官らは前同様の目的をもつて、控訴人の本件確定申告後当審に至るまで、訴訟上、訴訟外で事実に反する主張、違法な主張(その主なものは別紙)をし、控訴人の名誉と信用を毀損した。」を、同一〇行目の「係官」の後に、「及び本件訴訟担当官」をそれぞれ加える。
2 同六枚目表一行目の「3」の後に、「(1)」を、同五行目末尾に、「(2)また控訴人は、被控訴人らが前記の如き事実に反する主張、違法な主張をしたことから、不必要な調査を余儀なくされたのみならず、被控訴人らの調査により控訴人の信用と名誉が毀損された結果、宅地建物取引業の営業ができなくなつて、これを廃業するのやむなきに至り多大の損害を被つた。」を、同六行目の「係官」の後に、「及び本件訴訟担当官ら」をそれぞれ加える。
3 同一二枚目表一〇行目の「所有名義」の後に、「人」を加える。
4 同一九枚目裏二行目の「の(一)(二)」を削る。
5 同二三枚目裏四行目の「<2>―<3>」を「<2>=<3>」と改める。
6 同二八枚目表九行目の「九六番」を「九六番地」と改め、同裏一行目の「兼車庫」を削り、同二行目の「メートル」の後に、「等」を加える。
7 同二九枚目表二行目から五行目までと同六行目の「原告主張額のとおり、」を削り七行目の「原告申告額より」の後に、「控訴人申告額どおりの」を加える。
8 同三〇枚目表七行目と八行目の間に行をかえて次のとおり加える。
「同表の(5)の土地は、控訴人が昭和四四年に買受けたもので水野一男は使用していない。また(6)の土地上に存在する建物は、同人が使用し、同人は右建物の存在する部分(右土地の約三分の一の範囲)については固定資産税と都市計画税相当額を支払つているから、右土地は、控訴人が右一男に賃貸していることになり、右土地についての公租公課相当額を昭和四五年から昭和四七年分の不動産所得の必要経費として認定すべきである。同表(3)の土地及び(12)の建物の昭和四七年度分については、同年度の固定資産税、都市計画税の第一期分の納期が同年四月三〇日であるところ、右不動産を取得する際の条件が、右第一期分から新所有者である控訴人が支払うこととなつていたため控訴人において支払をしたのであるから控訴人の負担すべき同年度分の公租公課というべきである。」
9 同三〇枚目裏一〇行目の「までの分、訴」から一一行目の「を否認する。」までを次のとおり改める。
「までの分を否認する。訴外教会については、昭和四七年一〇月分のうち四〇〇〇円のみ認め、その余の同月分は否認する。同教会との間には昭和四七年一〇月二五日より賃貸借契約が発生し、賃料は同年一〇月分が四〇〇〇円、同年一一月、一二月分が二万五〇〇〇円の合計五万四〇〇〇円で、昭和四七年一二月の入金分については、昭和四八年一月分の賃料であるから、昭和四七年分に入れるべきではない。」
10 同三一枚目表五行目と六行目の間に行をかえて、
「秋田については、住居の用に供しない旨の特約があり、また使用目的及び賃貸借契約解除の条件、賃貸借期間も明記されている。右秋田の保証金を収入と認定するのは、右契約が完全に実行された場合を想定していることになるが、右契約条件が秋田によつて完全に履行される保証はない。もし保証金収入を認定するならば、賃貸借期間満了による建物の明渡がなされたこと、契約違反の解除による明渡でないことを認定すべきである。右認定なくして直ちに不動産所得とすることは不可能である。また玉置は、使用目的を住居としたが、同人はこれを無断で転貸してその転借人に営業用に使用させているものであり、しかも建物を一部改造使用し、賃貸借建物及び付属設備に相当の損害を与えたため、建物明渡時において保証金より一部を損害として差引いて返還したもので前掲秋田の場合とは、その契約条件を異にするものである。」を加える。
11 同三二枚目裏三行目と四行目の間に行をかえて次のとおり加える。
「被控訴人らは不動産所得に対する必要経費は、公租公課、減価償却費のみしか認められず、それ以外の費用(修理費、維持費、訴訟費用等)は認められないという。しかし不動産所得に対する必要経費は、不動産所得を継続して得るための必要な経費であつて所得税法上、必要経費が公租公課、減価償却費以外に認められないという規定はない。」
12 同三六枚目表五行目の「及び」を「、5、」と改める。
13 同三六枚目裏五行目の「所有者」を、「所有名義人」と改め、同一一行目の次に行をかえて次のとおり加える。
「3 必要経費
原判決別表一〇の(4)の土地は建築用資材の倉庫兼作業場、同(7)の土地は売却するための土地、同(9)の建物は宅地建物取引業の事務所であるから、これらに対する公租公課は営業所得の必要経費として認定すべきである。
原判決別表一〇の(1)の土地、(8)の建物は、その一部を控訴人の不動産取引業の事務所及び車庫として使用しているのであるから、右使用部分についての公租公課は、営業所得の必要経費として認めるべきである。
よつて以上の合計額が必要経費となる。」
14 同三七枚目表一行目の「八八万五、四九二円」の後に、「以下」を、同四行目の「2」の後に、「、」をそれぞれ加え、同行目の「6」を削る。
15 同三七枚目裏八行目の「(1)」を「(10)」と改める。
16 同三八枚目裏一行目と二行目の間に行をかえて、
「5 必要経費
昭和四五年分と同じ理由により、原判決別表一〇の(4)、(7)の土地、(9)の建物の公租公課、同表(1)の土地、(8)の建物のうち控訴人の不動産取引業の事務所及び車庫として使用している部分についての公租公課は、営業所得の必要経費として認めるべきである。
よつて以上の合計額が必要経費となる。」
を同三行目の「円」の後に、「以下」を、同五行目の「(17)」の後に、「(18)」を、それぞれ加える。
17 同三九枚目表一行目の「ない。」の後に、「電気料金につき仮に家事使用分を控除するとしても、控訴人の使用場所は二か所あり、中部電力株式会社南営業所(昭和区曙町を管轄)分のみ家事使用分とすべきであり、同社北営業所(千種区内山町を管轄)分は事業上の経費とみるべきである。
したがつて、必要経費とすべき電気料金は、乙第三〇号証(右南営業所作成の電気料金回答書)により認められる控訴人の同営業所に対する昭和四七年分支払額三万二三七一円から同年度一世帯当りの平均家事使用分二万一八八二円を控除した一万〇四八九円を事業用とし、それに乙第三一号証(右北営業所作成の電気料金回答書)により認められる控訴人の同営業所に対する同年分の支払額九五六七円を加えて二万〇〇五六円を算出するのが正しい計算方法というべきである。
また、上下水道料金についても同様であり、昭和区曙町の住居使用分一万二四二五円より一世帯当りの平均家事使用分六七三三円を控除した五六九二円を事業用とし、これに千種区内山町一丁目九六番一の土地の使用分二六八八円を加算した八三八〇円を昭和四七年分の営業所得の必要経費として認めるべきである。
また、電話料金について、控訴人は<1>七三一局七〇〇三番<2>同局七〇〇四番<3>七四一局二八五三番<4>七三一局〇六四八番の四本の電話を設置し、そのうち<1>ないし<3>の電話を事業用に、<4>の電話を家事用に使用していたから、被控訴人署長が<1>ないし<3>の電話料金五万三四五三円について家事専用部分を控除して三万六八八七円と認定したことは、前記<4>の電話を家事専用として他の三本の電話を事業用専用として利用している事実を無視している。
よつて<1>ないし<3>についての電話料金五万三四五三円全額を昭和四七年分の営業所得の必要経費として認めるべきである。」を加える。
18 同三九枚目裏九行目から同四〇枚目表九行目までを、「また控訴人は、昭和四六年五月二九日本多サービスよりカークーラー(自動車用)八万三〇〇〇円を購入したので、その減価償却費一万二四〇〇円が昭和四七年度営業所得の必要経費として認定されるべきである。」と改める。
19 同四〇枚目裏九行目の「山林二」を「山林、宅地各一」と改める。
20 同四一枚目表七行目の「九六番地」の後に、「二」を加える。
21 同四一枚目裏末行の次に行をかえて次のとおり加える。
「(キ) 自動車修理費(原判決別表九の5の(18))
控訴人の申告額一三万五〇〇〇円のほか、自動車重量税一万円、自動車損害賠償責任保険料三万五四五〇円自動車保険料一万九九〇二円があるので、これらの合計額二〇万〇三五二円が昭和四七年分営業所得の必要経費として認定されるべきである。
(ク) 公租公課
昭和四五年度分と同一の理由により、原判決別表一〇の(4)、(7)の土地、(9)の建物の公租公課、同表(1)の土地、(8)の建物のうち控訴人の不動産取引業の事務所及び車庫として使用している部分についての公租公課は、営業所得の必要経費として認められるべきである。」
22 同四二枚目表一一行目の「四円」の後に、「以下」を加える。
23 同四四枚目表二行目の「第一五号証の一」を「第一五号証の二」と、同三行目の「同号証の一」を「同号証の二」とそれぞれ改める。
24 同七二枚目(原判決別表五)の昭和四五年分合計欄の「149,774」を「149,974」と改める。
二 控訴人の主張
控訴人に送達された原判決正本は、七八丁の次に八〇丁、その次に七九丁、八一丁の順に綴じられており、右乱丁のため控訴人は原判決の理由の理解につき著しい困難を感じた。したがつて右正本の交付は、判決に影響を及ぼす違法な理由にあたる。
三 被控訴人の主張
1 控訴人が、住所を昭和五五年一一月一八日名古屋市昭和区曙町三丁目五番地の一から同市港区油屋町一丁目一九番地に移転したことにより、控訴人の納税地に異動が生じ、これに伴つて、旧被控訴人昭和税務署長の所轄していた権限一切は被控訴人中川税務署長が承継した。
2 控訴人の主張は争う。
なお控訴人は昭和四七年分の営業所得の必要経費として自動車重量税、自動車損害賠償責任保険料、自動車保険料を必要経費として認めるべきであると主張するが、これらは昭和四七年分の確定申告に際して控訴人が自動車修理費として申告した中に含まれているとみるべきである。
四 証拠関係
当審記録中の調書の記載を引用する。
理由
一 当裁判所の事実の認定、判断は、次のとおり削除、訂正、付加するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。当審における控訴本人尋問の結果(第一、二回)は右認定、判断を左右するものではない。
1 原判決四四枚目表六行目の「先づ」の前に、「控訴人が住所を昭和五五年一一月一八日名古屋市昭和区曙町三丁目五番地の一から同市港区油屋町一丁目一九番地に移転したことにより、控訴人の納税地に異動が生じ、これに伴つて旧被控訴人昭和税務署長の所轄していた権限一切は、被控訴人中川税務署長が承継したことは、控訴人において明らかに争わないところである。そこで、」を加える。
2 原判決四四枚目裏七行目の「竹内」を「竹田」と改める。
3 同四六枚目表三行目の「こと」の後に、「(控訴人と訴外教会との間に昭和四七年一〇月から同年一二月まで賃貸借契約が存在したこと、同年一〇月分の賃料収入のうち四〇〇〇円、同年一一、一二月分の賃料収入については当事者間に争いがない。)」を、同四行目の「存しない。」の後に、「なお昭和四七年一二月三〇日に同教会より入金した二万五〇〇〇円が昭和四八年一月分の賃料であることを窺わせるに足りる証拠はない。」をそれぞれ加える。
4 同四七枚目裏六行目末尾に、「なお前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、秋田及び玉置から受領した各保証金のうち三割について、これをもつて建物賃貸借から生ずる損害賠償債権に先ず充当することを義務付けられているものではないと認められ、各賃貸建物の償却費として当然、これを取得しうべく、また、これを取得しているものと解するのが相当である。」を加える。
5 同四八枚目裏五行目の「認められ」の後に、「、甲第五七号証をもつては未だ右認定を左右するに足りず」を加える。
6 同四九枚目表三行目末尾に、「(なお控訴人は同表一〇の(5)の土地は、水野一男は使用していないと主張するが、前掲乙第四一号証、証人渡辺隆夫の証言によれば、(5)の土地は(6)の土地と一体として利用されていることが認められるから右控訴人の主張は採用することができない。)」を加える。
7 同裏三行目末尾に、「(控訴人は同表(6)の土地については、水野一男が固定資産税と都市計画税相当額を支払つているから、右土地は、控訴人が右一男に賃貸していることになり、右土地についての公租公課相当額を不動産所得の必要経費として認定すべきであると主張するが、同人が右支払をしていることを認めるに足りる証拠はなく、仮にそのような事実があつても、右土地(三分の一の範囲)、建物(同人使用中の)について不動産所得が発生していない以上、これについての必要経費を生ずる余地がないというべきである。)」を加える。
8 同五〇枚目裏一〇行目の「乙第四六」の前に、「弁論の全趣旨により成立の認められる」を加える。
9 同五二枚目表五行目の「売上原価」の後に、「及び5」を加え、同八行目の、「証人加藤豊時の」を、「原審証人加藤豊時及び当審証人竹中一の各」と改める。
10 同五三枚目表六行目の「乙第二二号証」以下同五四枚目表三行目までを次のとおり改める。
「甲第一号証の二、乙第二二号証(後記信用しない部分を除く。)、原審証人井上昇(後記信用しない部分を除く。)、同加藤豊時の各証言、当審証人辻村英吉の証言及びこれにより成立の認められる甲第二五号証、弁論の全趣旨により成立の認められる乙第一九号証、当審における控訴本人尋問の結果(第一、二回)によれば、右物件は、元辻村明子の所有であつたが、同人は右物件を他に売却しようと考え、義兄の辻村英吉に相談したところ、同人は隣人の不動産業者森秀之助に依頼して買手を探してもらい、結局控訴人がこれを買受けることになつたこと、昭和四五年七月二四日控訴人と辻村明子の代理人辻村英吉との間に売買代金五〇〇万円で売買が成立し、売買契約書が作成された(なお、売買契約成立までに多数の仲介者が介在したために、一〇〇万円が仲介者によつて差引かれ、最終的に辻村明子に交付された売買代金額は四〇〇万円にとどまつた。)ことが認められ、乙第二二号証の記載及び原審証人井上昇の証言中右認定に反する部分は信用できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
(四) 次に必要経費の主張につき判断する。控訴人は同表(4)の土地が建築用資材の倉庫兼作業場に使用されていたと主張するが、これにそう甲第一四号証、第四五号証の一、乙第三八号証はにわかに採用し難く、他にこれを認めるに足りる証拠はない。また、控訴人は同表(7)の土地は売却するための土地であり、同表(9)の建物は宅地建物取引業の事務所であると主張するが、本件全証拠によつてもこれを認めるに足りない。
控訴人は同表一〇の(1)の土地、(8)の建物について、その一部を控訴人が不動産取引業の事務所及び車庫として使用しているとして、その使用部分についての公租公課を営業所得の必要経費として認めるべきであると主張する。右土地、建物が控訴人の不動産取引業のための事務所及び控訴人自身の居住のため使用されていることは前認定のとおりであるが、本件全証拠によつてもそれらのうち事業に供されている部分を明確にすることができない。したがつて右土地、建物の公租公課の一部を必要経費と認めることはできない。
(五) よつて、同年度の控訴人の営業所得金額は、原判決別表七の被控訴人税務署長主張額より一〇〇万円を減じた一四三万五四九二円が正当と認められる。」
11 同五四枚目表六行目の「6」を削る。
12 同五七枚目表八行目と九行目の間に行をかえて、次のとおり加える。
「(エ) 必要経費
控訴人は原判決別表一〇の(4)、(7)の土地、(9)の建物の公租公課、同表(1)の土地、(8)の建物の公租公課中事業供用部分については、必要経費として認めるべきであると主張するが、昭和四五年度分について判断したと同一の理由で右主張は採用することができない。」
13 同五七枚目裏三行目と六行目の「(19)」を「ないし」と改め、同六行目(20)の後に、「の公租公課」を加える。
14 同五八枚目表一〇行目の「認める」の後に、「(なお控訴人は電気料金について、中部電力株式会社北営業所分は全て事業上の経費であると主張するが、これを認めるに足りない。また上下水道料金について、控訴人主張の二六八八円を認めるべきであると主張するが、右料金分が事業の用に供されたものであることを認めるに足りる証拠はない。更にまた控訴人は電話料金について、四本の電話のうち、三本を事業専用として利用していると主張するが、本件全証拠によつてもこれを認めるに足りない。)」を加える。
15 同六〇枚目表八行目と九行目の間に行をかえて、
「控訴人はカークーラーの減価償却費を主張するが、当審における控訴本人尋問の結果(第二回により成立の認められる甲第六一号証、第六二号証の一、二、第六三号証をもつては未だ控訴人主張のカークーラーが事業の用に供されたことを認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はないから控訴人の右主張は採用することができない。」を加える。
16 同六〇枚目裏二行目と三行目の間に行をかえて、次のとおり加える。
「(カ) 自動車修理費
控訴人は、申告分一三万五〇〇〇円のほかに自動車重量税一万円、自動車損害賠償責任保険料三万五四五〇円、自動車保険料一万九九〇二円が必要経費として認定されるべきであると主張するので判断するに、成立に争いない甲第三五ないし第三七号証、当審における控訴本人尋問の結果(第二回)によれば、控訴人の右主張事実が認められ、右認定に反する被控訴人らの主張は採用することができない。
(キ) 公租公課
控訴人は原判決別表一〇の(4)、(7)の土地、(9)の建物の公租公課、同表(1)の土地、(8)の建物の公租公課中事業供用部分については、必要経費として認めるべきであると主張するが、昭和四五年分について判断したと同一の理由により右主張は採用することができない。」
同三行目の「(カ)」を「(ク)」と改める。
17 同六一枚目表一〇行目と一一行目の間に行をかえて次のとおり加える。
「(四) したがつて、控訴人の昭和四七年度営業所得金額は別表九の被控訴人署長主張額より六万五三五二円を減じた二〇九万九〇七一円が正当と認められる。」
18 同六一枚目裏七行目から九行目までを次のとおり改める。
「四 以上の次第であるから、控訴人の総所得金額は、昭和四五年分につき被控訴人署長主張額より一〇〇万円を減じた三〇二万三九二三円、昭和四六年分につき被控訴人署長主張額より三〇万円を減じた二〇四万二七七四円、昭和四七年分につき被控訴人主張額より六万五三五二円を減じた四〇〇万五四七七円」
19 同六二枚目表七行目の「三〇万円」以下八行目末尾までを「損害賠償請求は理由がなく、また、被控訴人らの違法な調査が原因となつて控訴人が廃業するに至つたことを認めるに足りる証拠もないから右理由に基づく損害賠償の請求もまた理由がない」と改め、九行目の「所得税法」の前に、「昭和五五年法律第八号による改正前の」を加える。
20 同六二枚目裏五行目から六行目にかけての、「弁論の全趣旨により成立を認めうる」を「成立に争いない」と改める。
21 同六三枚目裏三行目と四行目の間に行をかえて次のとおり加える。
「(三) 昭和税務署係官及び被控訴人ら訴訟担当官らが控訴人に対する報復的意図ないし本件更正処分等の正当化の意図をもつて訴訟上、訴訟外で事実に反する主張、違法な主張(その主なものは別紙)をしたとの控訴人の当審主張については、本件全証拠によるもこれを認めることはできない。」
二 控訴人は、送達された原判決正本の乱丁をいうが、仮にその主張するような事実があつたとしても、そのことから原判決が不当、違法であるとか、或いは言渡手続に瑕疵があるということはできないから、右主張は到底採用することができない。
三 以上により原判決は正当であつて、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 可知鴻平 裁判官佐藤壽一、同玉田勝也は転任につき署名押印することができない。裁判長裁判官 可知鴻平)
別紙
(被控訴人らの事実に反する主張、違法な主張)
1 被控訴人らは、控訴人が名豊トヨペツトサービス株式会社から受領した一〇万円について、これが右会社と控訴人との土地売買登記の費用であることを、調査の結果知りながら、これを控訴人の売買手数料収入であると主張していること。
2 被控訴人らは、トヨタカローラ名古屋株式会社経理部長牧野軍二と共謀し、控訴人の車両取得価額が四三万円であるのを三五万五〇〇〇円とする虚偽の事実を捏造し、これを主張していること。
3 被控訴人らの本訴における指定代理人であつた井上昇は、千種電話局長に対し平子進名義の加入電話七三一局七〇〇四番の電話料の支払額、支払方法を照会するに際し、同人名義となつたのは昭和四六年二月一日であるにも拘らず、右電話は同四五年一月すでに平子進名義で加入されていた旨の記載をして昭和四五年一月より同四七年一二月までの電話料の支払額、支払方法につき回答を求め、(乙第三三号証)、同電話局長をしてその旨の回答をさせ、右回答に誤りがあることを知りながら事実を隠ぺいする目的で回答書に記載された誤つた額等を主張していること。
4 被控訴人らは、昭和四七年九月の台風で控訴人の建物が被害を受けたことを調査の結果知りながら、故意にその事実を隠ぺいし、被害を受けなかつたと主張し、かつ、台風による被害額が営業の必要経費か、不動産所得の必要経費か又は雑損控除のいずれかに該当するにかかわらず、これを該当しないと主張していること。
5 被控訴人らは、控訴人と辻村英吉、辻村明子との土地建物の売買代金が、仲介人である辻村英吉に支払つた仲介手数料一〇〇万円を含め五〇〇万円であることは旧被控訴人昭和税務署長において容認するところであり、かつ、この額について更生決定、異議申立、審査請求の時に全く争点となつていなかつたにもかかわらず、これを本訴において俄かに四〇〇万円であると主張し、その差額一〇〇万円について仲介人である辻村英吉に事情を聴取せず故意に事実を隠ぺいし、また、指定代理人をして「お尋ね」の文書を捏造せしめ、違法な主張をしていること。
6 被控訴人らは、控訴人林宇多子、福田商会らの建物不法占拠によつて一二三万円の損害を受け、これが不動産所得の必要経費になることを知つていたにもかかわらず、これを隠ぺいし、また、控訴人と右福田商会らとの建物明渡訴訟にも介入し、同商会に有利になるよう策謀し、同商会を正当な賃借権者と認定するなどの違法を侵し、さらに旧被控訴人昭和税務署長配下の調査官松井繁利をして右訴訟の内容を明らかにし、記録を提出するよう要求し、このことを主張していること。
7 被控訴人らは、控訴人提出の昭和四五年分確定申告書に不動産売買明細書が添付されているのに、右明細書を隠ぺいするため、これがないと主張していること。また、右松井繁利は、控訴人に対し、営業、訴訟の秘密書類の提示あるいは家宅捜索をするなどの強要をしたこと。
右明細書が右申告書に添付されていたことは、控訴人の所持する収受印のある文書から明らかである。
8 被控訴人らは、名古屋市昭和区天白大字平針字長田一〇〇〇番三の土地の売買について、仲介人である加藤豊時が五五万円の仲介手数料を取得していることを知りながら、これを控訴人の所得になると主張していること。
また、右仲介料については、原処分時には争いがなかつたにもかかわらず、被控訴人らが本訴に及んで俄かに主張していること。
9 被控訴人は、控訴人の営業内容からみて、贈答の必要性がなく、もし被増答者があるならば、その者の氏名を明らかにせよと主張していること。これは明らかに控訴人の営業内容に対する介入干渉であり、営業妨害をする目的でなした違法な行為であること。
10 被控訴人らは、控訴人の家賃収入すべてについて必要経費の必要性がないと主張しながら、他方で、固定資産税一二九三円について、これを不動産所得の必要経費として認めており、その間に法律的根拠又は理論的一貫性がなくその場、その場で捏造した違法があること。
また、原処分時に家賃収入についての必要経費として固定資産税一二九三円を認定しながら、本訴に及んでこれと異なる主張をしていること。
11 被控訴人らは、不動産所得の必要経費を自ら算出し、控訴人の主張する費用を根拠がないという理由で否認しているが、これは控訴人の事業内容への干渉であり違法であること。
12 被控訴人らは、地代家賃統制令による賃料が貸主の犠牲によつて抑圧されていることを知りながら、賃料収入すべてが所得になる旨、また、右統制令による家賃収入では家屋の維持修理が賄いきれないことを知りながら、これらの収入すべてが所得になる旨主張していること。
13 被控訴人らは、控訴人主張の不動産所得、営業所得に対する必要経費の選択権限がすべて事業主である控訴人にあることを知りながら、控訴人主張の必要経費を否認している違法があること。
14 被控訴人らは、再建築消耗維持費が事業遂行上の必要経費にあたらないとして、これを否認しているが、これは所得税法三七条の規定を無視しており、また、控訴人の主張を不法に隠滅した違法があること。
必要経費に関する被控訴人らの右主張には、主体性と一貫性がなく、控訴人のなした守秘義務違反追及に対する報復的意図をもつてなされたものであること。